2023年05月22日


ノックアウトステージ32→16
×ガクテンソク257ーマシンガンズ266〇

ノックアウトステージ16→8
〇マシンガンズ289ーランジャタイ258×

グランプリファイナル一回戦
×金属バット269ーマシンガンズ271〇

準決勝
〇マシンガンズ284ー三四郎256×

決勝
×マシンガンズ246ーギャロップ276〇


いや決勝のマシンガンズの点数低っ!

マシンガンズのことでこんな長時間ドキドキしたのが初めてだったから、昨日番組が終わったあとは心臓が痛かったです。

ここまで勝ち続けたのはすごいことだし、マシンガンズの良さが全て出てました。
人気者を倒して倒してさらに強くなって、グランプリファイナルでは松本さんにはまってない感じでいじられることもネタにして、目に映るものすべてを全てをネタにして、決勝の決勝まで行けました。
あれが私の大好きなマシンガンズの姿です。最後の漫才、あれがマシンガンズの真骨頂です。

売れっ子芸人さんの中には、トークはすごく面白いのに漫才となるとなんだか縮こまってしまう人がいるじゃないですか。
マシンガンズはその反対で、「漫才」という枠を与えられた瞬間に、滝沢さんと西堀さんは誰よりも何よりも自由になるんです。くさい言い方ですが、それ以外に表現のしようがない。よく「大阪の人は二人で喋っているだけで漫才になる」なんて言いますが、本当にそれをやるんです。しかも大阪弁を使わずに。
そういう意味で、マシンガンズは生粋の漫才師だと思います。

最後の漫才、ネタ部分の言うことは台本があるわけじゃないですか。でもそれ以外は決まっていなくて、二人で呼吸を合わせて喋りながら、ネタ部分に入っていったりまたトークに戻ったり。つなぎ目は見えているけど、あのゾーンに入ると、どうやって制御してるのか、どういう方法論で笑いを取っているのかが見えなくなるんですよ。ファンの私でも。
しかもボケツッコミに分かれていない二人だから、相手がどういう性質のことを言って自分がどう反応すれば笑いになるのかの形に制限がなくて、全く先が見えないんですよね。でもなぜかそれが成立する、漫才になる。二人が手を挙げてツッコミを入れるところではなく、それこそがマシンガンズの真骨頂だと思います。

特に、滝沢さんの存在がマシンガンズという漫才師の特異点だと思うんです。西堀さんはストレートに天才と言われてきた人で、器用でトークでぼやいたり落としたりするのもうまくて実力の形がすごく見えやすいけど、滝沢さんって不器用な人だから声の抑揚もあんまりつかなくて、「ズガガガガガ」みたいに喋ってるじゃないですか。詰まったり噛んだりして全然何も言えてない時もありますし(ここから褒めるのでご容赦ください)。

でも滝沢さんが本当に勢いづいた時って、どんなすごい漫才師でも起こせない爆発が起きるんですよね。舞台袖、MC席、ライブの時には壁に空いてる穴にまでいきなり何か言って、ドンッと笑いが起きる。今回の決勝戦の漫才みたいに「全てをかけて笑わせる」が本当になる。言葉に嘘がないんですよね。それは芸人として、漫才師として稀有な才能なのかもしれません。
で、それに西堀さんが硬軟自在の反応をすることでライブ感が生まれて、笑いが渦みたいになっていく。滝沢さんのああいうのに反応できるのは本当に西堀さんだけだと思います。

しかしガクテンソクに勝ちランジャタイに勝ったところでお笑いシーンにマシンガンズ旋風が吹き荒れましたね。
私が観覧した4月30日の、伝説の先攻2点7人のあの瞬間から、あれよあれよとここまで来ました。
金属バットに勝てるかが一番不安だったので、そこが緊張のピークだったんですが、その後もなんだかんだ緊張していたようで、昨日は心臓が痛かったです。

伝説の先攻2点7人のあの瞬間から、マシンガンズは主人公みたい、優勝してほしいという声がSNSに溢れました。
それだけでもすごい経験です。文字通り、天地がひっくり返ったみたいに、地の底にいたと思ったら次の瞬間にはそこがてっぺんになっていた感じ。「面白い」だけじゃなくて、好き、勝ってほしいという大勢の気持ちが一気に見えるようになったという。

組み合わせ抽選も好評で、西堀さんの「趣旨に!」が話題になって。
マシンガンズは逆境に強いタイプだから、優勝候補とまで言われ始めて、私は内心「そこまで言わないで!」と思っていました。
でも始まってみたら、金属バット戦こそ薄氷の勝利だったものの、松本さんに名前を間違えられたこととか、SNSの書き込みとか、その日の出来事すら取り込んで漫才にして、お疲れちゃんもヤーもやって、怒って笑って飛び跳ねて、二人の魅力をこれでもかと振りまいたと思います。
(ちなみに滝沢さんは器械体操、西堀さんはバレーボールをやっていたので、跳躍が得意なコンビなのかもしれません)

3本目の漫才、台本は提出しているわけで、ネタがないというのは何割かは事実で何割かは戦術だったと個人的には思っていますが、あそこまでの状態になることを本人たちが狙ってやっていたのかはわかりません。

マシンガンズの漫才があそこまでの状態になることはたまにあって、はっきりわかるところだとDVD「怒」の最後のネタがそうだと思います。あのDVDは(イルカのDVDではありません)収録ライブをやって漫才を6本ぶっ続けで披露しています。
若い頃とはいえそんなに続けてやれる芸風ではないので、6本目は目に見えて二人ともボロボロなんですが、それがめちゃくちゃ面白いんですよ。破れかぶれに叫んで叫んで、全てに向けた銃口が結局は自分たちに返ってくる。バカだのなんだのたくさん言ってきたけど結局俺らは何なんだというような叫びの漫才です。

他にもライブでとんでもないゾーンに入ったところは見てきたと思うんですが、やっぱり追い詰められる状況でないとなかなかそうはならないはずですよね。それがまさか、テレビの賞レースの決勝の決勝で見られるとは思いませんでした。

あれがマシンガンズの一番すごいところです。センスのある芸人さんも技術のある芸人さんもたくさんいるけど、あんな笑いの取り方をするコンビは他にいません。

133組がエントリーして、そのうち予選から決勝戦まで6回もネタをやることができたのは、ギャロップとマシンガンズだけです。
そしてマシンガンズは、ノックアウトステージ以降の5戦中、ポットAと4回当たって3回勝っています。勝った3回のうち2回は先攻での勝利です。ポットAの8組のうち半分と当たったんですね。この先大会が続いたとして、ポットAを3回倒す組は現れるのでしょうか。
並みいる強敵をぶち破って勝ち上がり、そのたびに強くなる姿のかっこよさときたら、それは確かに主人公のものでしょう。予選が進む間にマシンガンズがみるみるかっこよく見えてきたのは、きっと私のひいき目だけではないと思います。
そもそも一時期に比べてマシンガンズの外見はどんどんよくなっていたんですが、特に最近はとてもいい年のとり方をしていますよね。その中でも予選を通してまたさらにかっこよくなっていくのは圧巻としか言いようがなかったです。

(参考記事 「顔」で見るマシンガンズという漫才師

おそらく松本さんのコメントを受けて来年からの審査は何でもあり感が薄れると思うので、マシンガンズみたいな戦い方、勝ち方をする漫才師が出てくる可能性はほぼないと思います。
初回かつ無観客という超荒れ場だったお笑い成人式で優勝したように、マシンガンズはまだ固まっていない足場の上で戦うことが得意なのかもしれません。マシンガンズがこんな強敵たちを向こうに回して戦えたということが、とても誇らしいです。


3本も漫才をするルールだから、マシンガンズの魅力が全部出ました。そしてたった1組の相手を倒せばいいタイマンバトルだから、お笑いファンによる工夫された審査だから、ここまで勝ち上がることができました。6分もネタ尺があるから、「ネタがない!」と叫んであの手この手を繰り出す二人の姿が見られました。
いろんな全てが合わさって、惑星直列並みの奇跡で、最後の芸術みたいな漫才がテレビで放送されました。むしろ行きすぎて漫才を通り越してしまった感すらありました。

でもそれはただの奇跡ではなくて、奇跡をつかみ取る努力を怠らなかった二人の勲章だと思います。
マシンガンズがこの大会に関してよく話していた「久々にテレビで漫才をやったらうまくいかなかったから、反省して月一度は集まって漫才をやるようにした」というのは、たぶん2021年5月のENGEIグランドスラムマチネだと思います。いぶし銀枠みたいなコーナーでおしみんまるさんと一緒に紹介されて、すごく楽しみにしていたけど、爆笑とはなかなか言えない出来だったのを覚えています。
(※2024年3月5日追記 マシンガンズの単独ライブのパンフレットにアンタウォッチマンの収録でうまくやれなかったという話が書いてあったので、そちらの番組の可能性があります。セカンド前に呼ばれた時の番組名はお笑い実力刃でした)

それで月一回はライブに出るようにしたことでこの結果が…いや月一回って、吉本の芸人さんからしたら全然少ないんですが。
でも、非吉本の芸人さんで20年選手とかだと、コンスタントに出られるライブが全然ないんですよね。集客できるのは若手芸人ですから。だからみんな漫才協会に入るんだと思います。
THE SECONDの開催やマシンガンズのこの快進撃を機に、非吉本のベテランが立てる舞台ができないかなと思う次第です。

でも今思うと、その出演がなければ絶対この結果にはならなかったわけで、「心の中では芸人をやめている」なんて言いながらもテレビ出演の出来を反省してちゃんと漫才師であり続けようとした二人に、神様がチャンスをくれたのかなと思いました。
ただ、マシンガンズの最近の漫才を見たことがある人ならわかると思いますが、およそ心の中で芸人をやめている人の喋りや勢いではない、ゴリゴリの漫才です。

あとはもちろん、マシンガンズがもともとものすごく面白い漫才師だからというのもあります。
ライブのトークで、いろんな芸人さんがマシンガンズを褒めているところを見てきました。客ウケ抜群の漫才師が、ロジカルなネタを量産する漫才師が、類い稀なセンスのある漫才師が、口を揃えるように「マシンガンズさんは面白い」「かっこいい」「憧れる」「本当はああなりたい」と言うんです。
東京の芸人さんが憧れる、ちょっとアウトローでふらっとセンターマイクの前に立ってアドリブみたいなやりとりで爆笑を起こして、自分たちもゲラゲラ笑っている。そんな姿を体現する漫才師であるマシンガンズが売れないなんておかしいですよ、絶対に。

全部勝つことはできなかったけれど、ツイッターを見ているとファンになった、かっこいい、面白いという人がたくさんいるようで、それが一番うれしいです。漫才でマシンガンズの魅力が広く伝わるって、理想的じゃないですか。
二人とも本当にいい人で、滝沢さんはお笑いに熱い努力家で、西堀さんは天才型の伊達男です。ファンから見て、ちゃんとお互いのいいところを尊敬していて、お互いの足りないところを補おうとしている、いいコンビです。

漫才はもちろん、ラジオもめちゃくちゃ面白いです。ポッドキャストで「ネガポジ」で検索すると見つかります。マシンガンズという名前がタイトルに入っていないので要注意です。
アマプラでもマシンガンズで検索すると「怒」から抜き出して収録しているDVDが少し出てきます。「怒」もアマプラでレンタルまたは購入できます。


あとは私のブログについて。
マシンガンズが決勝に行ったことでこのブログを久々に読んでくださる方もいて、昔の記事がほぼなくなっていることを残念だと言われることもあるんですが、記事を再公開することはないです。

まず、テレビやライブやネタの内容をそのまま書くことが特にマナー違反とされていない時代に書いたものであることが一つ。あとは、テレビなどの感想でも芸人さんを呼び捨てにして書いていて、とても手直しができない分量であることがもう一つ。

どちらも気にしない人はしないと思うのですが、私としてはこれをネット上に自分が上げることはちょっとできないというところです。
今は芸人さんが直で見てリアクションをしてくることもありうる世の中なので、そこをうまくやっていく自信は私にはないです。
呼び捨てが自分的には一番きついかもしれません。今見ると本当に何様なんだと思います。
皆さんも公開されているSNS上で芸能人のことを書く時には、とりあえず呼び捨てにしないことだけでも心がけると、エゴサする本人やたまたま目に入った関係者などが受けるダメージが少なくなるかもしれません。


それにしても、すごい大会だったしすごい決勝でしたね。こんなに芸人ファーストで余分なものがなくて芸人さんをメインにかっこよく取り上げてくれていいの?と思いました。オープニングやネタ前の画像はマシンガンズ史上一番かっこよかったし、煽りVTRもプライベートの苦労とかなしで、ただただ漫才師として扱ってもらえているのがうれしかったです。ずっとああいうかっこいいオープニングとか煽りVTRに出るマシンガンズが見たかったんですが、期待以上のものが見られました。
というか、事前番組から8組全員すごくかっこよく取り上げてもらえましたよね。本番も、「バラ色の日々」が流れるVTRの最後で8組が紹介された時に、今日の主役はこの人たちなんだ!と伝わってきました。

開催発表当時は、「M-1を卒業しても芸人が戦い続けないといけなくなる」という批判もありましたが、予選が進んでいくにつれ、お笑いファンだけでなく出場していない芸人さんたちも大いに盛り上がりました。それはおそらく、芸人さんも誰かを応援できるからじゃないかと思います。
金属バット、マシンガンズ、スピードワゴン、三四郎、ギャロップ、テンダラー、超新塾、囲碁将棋。
日本のお笑い芸人さんならみんな、この8組の誰かと近いコミュニティにいたり、境遇が似ていたり、自分を投影して自分の代表のように応援できるんじゃないかと思います。そのぐらい、芸風、年代、出身地、所属事務所と、幅広い漫才師が見事に揃っていました。
面白い芸人はかっこいい、そして長く続けていたらまた別の面白さとかっこよさが出てくる。出場していない芸人さんたちが熱く語るのを見るのもまた楽しかったです。

そしてあの審査システムですよ。あれは発明だと思います。ベテラン漫才師の賞レースとして、タイマンバトルという形式と観客審査のあのシステムが出てきたのはちょっとお笑い史上に残る出来事だと思います。

こんなにいいものが見られるのはお笑いブームが成熟しているからだと思います。
ノックアウトステージからいろんな感情が渦巻いてとても休まらなかったのですが、すごい4時間の生放送でした。こんな経験ができると思いませんでした。そりゃ心臓も痛くなりますよ。

芸人さん、スタッフの皆さん、ファンの皆さん、お疲れさまでした!
やっぱりマシンガンズはかっこよくて最高に面白い、最強の漫才師です。


マシンガンズ「怒」
マシンガンズ
2017-12-21




(00:41)